ヤフー株式会社 代表取締役社長

宮坂 学

MANABU MIYASAKA

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誰でも“株式会社自分”の経営者、ミッションは幸福。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

大きい会社であるヤフーの中で、みんなが今の環境を利用して、自分の幸せと結びつけられるような形にはなってきています?

宮坂様
宮坂

そうしたいなとは思っています。詳細なデータは取れてないのでわからないですが、少しでもそうありたいと願っています。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

働き方がどんどん最近は変わってきており、ヤフーでも働き方の改革が始まっています。ヤフーにとって、働き方の最終ゴールのようなものは描いていますか?

宮坂様
宮坂

まず「会社って何のためにあるの」、というテーマを重視しています。よく株主のためと言われますが、果たして本当なのか。それもひとつの事実ではありますが、さらに言えば従業員のためでも、お客様のためでも、地域のためでも、次世代のためでもある。結局、様々な人たちによるバランスの上で成り立つと思います。誰かの為と言い切れればシンプルですが、現実的にはそんな簡単には割り切れません。

中でも、従業員はすごく大事な存在です。従業員が悲しくて、ほかのステークホルダーが笑ってるのは耐えられない。一方で従業員だけ笑っていて、ほかのステークホルダーが泣いているのもおかしい。八方に目を配ってバランスを取るというのが、大きな会社の経営者に求められる手腕だと思います。

従業員の人生を考えると、人間はそもそも幸せになるために生きてるわけじゃないですか。金持ちになったりキャリアで成功したいわけじゃなく、大きな意味で幸せになる。それを実現する大きな要素が仕事ではないでしょうか。そう考えると、キャリアでは成功したけど幸せを感じないという状態は、非常に残念だと思います。会社と働く人の関係を見直して、仮にキャリアを積めない人がいたとしても、それと幸福感は違う次元のことです。先日も、新卒にそうした話をしたところです。270人の中で社長になる人がいるかもしれないし、一生ヒラの人もいるかもしれない。キャリアとはそういうものだし、別に偉くなるために働いているわけじゃない。幸せになるために働いているのだから、そこは勘違いするなと伝えました。新卒だと、まだピンと来ないかもしれませんが。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

きっと、だんだんわかってくるでしょうね。

宮坂様
宮坂

人生においてすごく大きなウエイトを占める仕事ですが、仕事だけで幸福かと言えば、それは違うと思います。いま、“株式会社 自分”という言い方をメタファーで使っていますが、“株式会社 自分”の社長は交代ができず、一生やるしかありません。では事業目的やミッションは何ですかと尋ねたら、幸せになる、ということに尽きるでしょう。一生涯、右肩上がりで成長していって、死ぬ瞬間が超サイコー。それが理想の自分経営ですよね。30年40年と働くのも大事ですが、その後のことも考えないといけない。あるときはがむしゃらに仕事をして、またあるときは家族やプライベートに集中する。会社は、そのチョイスが可能になる選択肢を用意すべきだと思います。最終的に“株式会社 自分”における“幸福の時価総額”を最大化してもらえたら、経営者としても嬉しいですね。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

宮坂さんが社長になってから5年経ちますが、宮坂さん自身の幸福度は上がっているのでしょうか?

宮坂様
宮坂

もちろん、上がっている気はしています。でこぼこは結構ありますが、おおむねちょっとずつ上がっている感じです。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

私はヤフーを辞めた後、いろいろな会社に行き、強烈な体験をしてきました。そこで気づかされたのが、仕事で幸せになりたいのなら信頼できる人と働きなさい、という真理です。あまり大きな声では言えませんが、信頼できない人が回りにたくさんいる環境はものすごいストレスになりました。

宮坂様
宮坂

信頼できない人と働くのって、大変ですよね。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

私の場合、最後は起業が一番いいというところに行き着いて、そのキャリアが最長になってしまいました。ただ私の会社だと社員はせいぜい数人ですが、宮坂さんだと何千人という人に影響を与えられると思うんですよね。

宮坂様
宮坂

そうですね、それはやっぱり重い仕事というか、やりがいあると思います。先ほどの話につながりますが、その何千人の幸福度を計れたら理想ですね。

井上(ユニバーサルナレッジ)
井上

ちょっと話すだけで、伝わってきませんか?

宮坂様
宮坂

わかる人はひと目でわかる特徴がありますね。3%でも5%でもいいから、その人が本当に楽しそうに働けているのか計れるようになると、会社も大きく変わるでしょう。人の働き方で計れるものは、いまは時間しかありません。それはそれで大事ですが、たとえば前のめりで仕事ができているのか、信頼できない環境で嫌だなと思ってるのかでは、まったく違います。会社全体の社員のハッピー度やwell-being、幸福度みたいなものを時価総額で見られるようになると、すごく面白い世界になると思います。

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